【連載】不動産投資の考え方 Vol.006 予算の組み方とキャッシュフロー
連載第六回では失敗しにくい予算の組み方、またキャッシュフローの考え方について解説します。
失敗しにくい「予算の組み方」とは?
投資家と話をしていると、不動産に対して求めるものが人によって微妙に異なると感じます。加えて、不動産も「ひとつとして同じものがない」とよくいわれます。つまり、一般化して語れば、不動産業者の動きひとつで、投資家を誤った方向へ導きかねないリスクもあるのです。
お金のかけ方も同様です。物件の購入代金とは別に諸費用がかかります。そこまでは、どの物件であっても同様ですが、たとえば、すべての部屋が空室状態のアパートがあった場合、それをどう再生させるかは、物件のエリアやその人の属性によっても異なってきます。
古くても使えるものは活用するのか、それとも交換するのかで、予算は変わります。
また、すべての部屋を一気に修繕する必要もありません。まずは1部屋を整えてそれを埋めるところから始める。その過程で反響や手応えを次の部屋のリフォームにフィードバックする。そんなふうに、より費用対効果の高いリフォームを行っていくというやり方もあるのです。
この場合、本来は取得費用とリフォーム費用の資金がいりますが、同時に借りてしまう方法もあります。物件購入価格にプラスして、リフォームの資金も一緒に借りることができます。
また、オーナーチェンジの物件は、購入してすぐに家賃収入を得られることが魅力ですが、空室の多い物件は融資返済に対して家賃収入が少なく、給与収入からもち出さなくてはなりません。
そういった分も自己資金として用意しておくことがベターですが、金融機関によっては据え置き期間といって「現在は空室が目立ちますが、リフォームして空室を解消し、安定した資料収入を目指します」という説明を金融機関にすれば、リフォーム期間と入居者の確保のための一定期間、利息だけ返済するやり方もあります。
この方法なら利息分のみ毎月返済すればいいので、負担が大きく軽減され、資金繰りが安定します。修繕と入居者の確保を済ませて、安定稼働させたタイミングで元金の返済が始まるという寸法です。新築アパートの融資では一般的なやり方ですが、中古物件でも金融機関に交渉してみる価値はあります。
金融機関に対しては金額、または期間で交渉するか、ふたつのアプローチがあります。
取り組む物件のボリュームにもよりますが、予算はある程度余裕をもって交渉するのが一番でしょう。
不動産購入にかかる費用
収益物件を購入する場合、不動産の取得にあたって、次の諸費用が必要となります。
●仲介手数料
物件価格が、400万円を超える場合
●印紙税
●登記費用
登録免許税、抵当権設定費用、司法書士手数料など
●固定資産税、都市計画税
購入の年は1月1日で起算し、引き渡しの前日までは売主、引渡日以降は買主の負担となり精算します。不動産購入後は、毎年かかる税金です。
●増入時に関わる費用
画資を受ける際には事務手数料、印紙税、保証料などがかかります。各金融機関により異なります。
●各種保険
団体信用生命保険、火災保険、地震保険などがあります。
●不動産取得税
土地や住宅など不動産の所有権の取得に、その不動産の所在する都道府県が課する税金。
購入時の支払いではなく、購入後半年程度を目安に支払います。
「キャッシュフロー」についての考え方
物件の収支がいいに越したことはないのですが、それが常に正解とは限りません。その人の投資のステージや、物件の特徴などによって変わってきます。大切なのは全体のバランスで考えることです。
キャッシュフローとは、現金の流れを意味し、得られた家賃収入から、支出を差し引いて手元に残る資金のことをいいます。手に残る金額ということで「手残り」という言い方もします。
サラリーマン投資家は、「利回り」(家賃収入+購入価格)とともにキャッシュフローを重視されますが、その考え方もさまざまです。
極端な例ですが、私が行っている不動産投資では「月々のローン返済をすると手残りがほとんどない物件」を戦略的に保有しています。それは土地の値段がものすごく出る物件です。つまり、キャッシュフロー=インカムゲイン狙いではなく、キャピタルゲインを狙っているのです。
今すぐに利益を生みませんが、時間を使って稼ぐ物件です。たとえ、その物件からのキャッシュフローがゼロでも、10年間で返済を完了すれば、解体して住宅用地として売却する出口戦略が可能になります。このように、明確な狙いがあれば、物件からキャッシュフローがまったく出なくても購入することがあります。
ですから、自分が置かれている状況と、使える融資がどうなるかを把握して、作戦を立てていくのが重要です。状況やステージ次第ではキャッシュフローがそれほど出ない物件をもつことも検討に値します。
次回は買い付けのタイミングや、物件の調査についてご案内いたします。